【第1章】分解と、見えてきた“数ヶ月前の痕跡”
「ラーメンの汁をこぼしたのは、数ヶ月前なんです」
今回お預かりしたNintendo Switchは、見た目こそ普通でしたが、電源は入らず、Joy-Conも反応せず、液晶も一切映らない。完全に沈黙した状態でした。
お話を伺うと、どうやら数ヶ月前にラーメンの汁が本体にこぼれてしまったとのこと。
内部がどうなっているのか──慎重に背面カバーを開けてみた瞬間、
私たちが目にしたのは、一面に広がる白い結晶とサビの痕跡でした。
ラーメンの汁や麺つゆなどの調味料は、塩分・アミノ酸・糖分を多く含んでおり、
乾燥・酸化によって、電子基板にとっては最悪の腐食環境を生み出します。
それが「数ヶ月放置」されていたことで、状況はさらに深刻なものとなっていました。






【第2章】腐食、そして白くこびりつく“痕跡”
水没から数ヶ月が経過したSwitch本体を慎重に分解していくと、目の前に現れたのは――
白くこびりついた粉状の物質が広がる、無残な基板の姿でした。
これは単なるホコリやカビではありません。
聞けば、「ラーメンの汁」や「麺つゆ」のようなものがこぼれた可能性があるとのこと。
つまり、塩分や糖分、アミノ酸、油分などを含んだ濃い液体が、内部までしっかり入り込んでいたということです。
水分が蒸発するにつれ、中に含まれていた塩分や糖分などが白く固まって基板にこびりついていたのです。
まるで南の海の“珊瑚”のように、ゆっくりと白い塊が形成されていったかのような光景でした。
Nintendo Switchが水没した場合、塩分や糖分が乾いて白くこびりつくような症状がよく見られます。
このような状態のまま放置すると、ICチップや基板そのものが腐食し、深刻なトラブルの原因になります。
そしてそれだけでは済まず、金属部分が腐食し、酸化して茶色く変色した箇所や、緑色に変わった部分も多数見られました。
これらはすべて、電子部品や配線がダメージを受けている可能性を示すサインです。



【第3章】見えない腐食との闘い。洗浄、そして回路修復へ
腐食の進行は、目に見える白い粉やサビだけではありません。
実際に分解してみると、スライドレールの接点や、各種ICの足元、コンデンサ周辺のランド(配線パターン)にまで腐食が進行していました。
なかでも厄介なのが、“見えない腐食”。
肉眼では正常に見える部分でも、導通テストを行うと反応がない、または不安定な箇所が多数見つかりました。
🧽 腐食除去とクリーニング作業
まずは腐食のこびりついた部分をピンセットや専用ブラシで丁寧に取り除き、基板表面に広がった汚れを慎重にクリーニングしていきます。
コネクタ内部やIC周辺など、目視では届きにくい箇所にも徹底的に処置を行います。
腐食が進んだ一部のICやサブチップは、同型のジャンク基板から移植することで対応。
また、ランドが剥離している箇所については、パターン修復やバイパス処理によって再構成を行いました。
このような作業は、単なる乾燥や表面清掃では対応できません。
Nintendo Switchの水没修理では、ICチップや基板そのものの修復が求められるケースが多く、専用の設備と高度な技術が不可欠です。
🔧 一つひとつの工程が、復旧への鍵
回路の断線確認とジャンパー処理
IC移植時の熱管理(周辺チップの損傷防止)
ハンダ劣化箇所の再処理
絶縁・防湿コーティングによる仕上げ
これらはどれも小さく地味な作業ですが、復旧の成否を左右する重要な工程です。
一点でも処置が甘ければ、データの読み出しはおろか、電源すら入らない状況に逆戻りしてしまいます。
【第4章】通電成功、しかし“画面が映らない”!?次なる課題へ
すべてのIC移植、パターン修復、腐食除去が完了。
基板の仕上がりを入念にチェックし、いよいよ通電テストの段階へと移ります。
このような修理では、最初に行うのは“感覚”ではなく数値での確認です。
バッテリーを仮接続し、専用の電源供給ラインから電圧と電流の立ち上がりを慎重に観察します。
このとき、安定した電圧の保持と定格範囲の電流変化を確認できたため、
**「起動処理は問題なく進行している」**と判断しました。
しかしその直後、新たな問題が発覚します。


【第5章】液晶が映らない…原因はバックライト電源ラインの断線
Switch本体は無事に起動し、ドックを介したTV出力も正常に表示されました。
しかし、本体側の液晶画面には一切表示がされない状態でした。
このような症状は、水没端末ではしばしば見られますが、通常は液晶パネルそのものが破損しているケースが大半です。
ただ今回は、液晶に映像が出ていないにも関わらず、タッチ操作には反応があることから、内部的には正常に動作していることが確認できました。
念のためバックライト系統を調査したところ、腐食によってバックライト用の電源ラインが断線していることが判明。
基板上の回路を顕微鏡で確認し、極細ジャンパー線(0.02mm)でバイパス処理を行いました。





修復後、ドックから取り外して本体単体で起動させると――
一度は液晶が正常に映り、タッチ操作もスムーズに反応。
しかしながら、液晶の表示は極めて不安定で、
一度スリープ状態に入ってしまうと、再び映像が出なくなってしまうという症状が残りました。
この場合、再度ドックに接続してTV出力状態にすることでのみ表示が復活するという制限付きの動作となりました。
完全な復旧とはいえない状態ですが、一時的にでも液晶が表示される環境が確保できたことで、
この端末からの**データ移行作業を続行できる可能性が見えてきました。
データ移行──Switch 2 へ「まるごと転送」に成功!
修理の最終目的、それは「データの復旧と移行」でした。
今回のSwitchは、元々電源すら入らない状態だったため、当初は「そもそも起動できるのか?」という不安がありました。
しかし、メイン基板の腐食修復・IC部品の移植・充電コネクタ交換などを経て、
TV出力を使えば本体操作ができるところまで復旧。
ここで新たなハードルが立ちはだかります。
移行先は「Nintendo Switch 2」だった!
なんと、お客様が用意されていたのは、最新機種「Nintendo Switch 2(有機ELモデル)」。
一瞬「新型に移せるのか…?」とよぎりましたが、ご安心ください。
✅ 任天堂公式にて、「まるごと転送」機能により、旧型SwitchからSwitch 2へのユーザー情報・セーブデータ・ソフト・設定等すべてを移行できると明記されています。
公式ガイドを確認した上で、慎重に作業を進行。
Wi-Fi接続が不安定なため、有線LANアダプターを用いてネット接続を確保し、
さらに有線接続のProコントローラーで操作対応。
Joy-Conが無反応、液晶表示が不安定という制約の中でも、
**「TV出力+有線Proコン」+「Switchドック経由のネット接続」**という環境で見事に移行処理が完了しました。




ポケモンのセーブデータも、無事でした。
お客様が一番気にされていたのは、「ポケモンのデータが消えていないかどうか」。
引き渡し時に、実際にご本人の目の前でソフトを起動し、
セーブデータがしっかり生きていることを確認していただきました。
そのときの安心したような表情は、技術者冥利に尽きます。
「水没 → 不起動」からのSwitch2移行も、可能です。
今回のように、
電源が入らない
液晶が映らない
Wi-Fiが使えない
といった状態からでも、適切な修理を施せば、データ移行は十分可能です。
特に、**Nintendo Switch 2への「まるごと転送」**は、任天堂の正式機能として対応しています。
【最後に】「ダメかも」と思っても、諦めないでください。
今回のNintendo Switchは、数ヶ月前の水没により深刻な腐食が広がり、
起動すらできない状態にまで陥っていました。
しかし、基板修復・IC移植・TV出力による操作復旧を経て、最終的にデータ移行まで成功。
Nintendo Switch修理は、症状が重くても**「データ復旧ができる可能性がある」**ということを、
今回の事例を通じて知っていただければ幸いです。
「液晶が映らない」「Joy-Conが反応しない」「ネットに繋がらない」「データを取り出したい」──
そんな時は、どうか一人で悩まず、ぜひi-Rescue119千葉印西店へご相談ください。
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